練習問題2.1

(a)既約ピタゴラス数(a, b, c は互いに素である)の a と b はどちらか一方が 3 の倍数であることを示せ。

a と b を共に 3 の倍数でないと仮定します。

a^2 = 3m + 1
b^2 = 3n + 1

となります。

ここを丁寧に解説すると、
すべての整数を 3 で割ると、

余りが 0 になる
余りが 1 になる
余りが 2 になる

に必ず分類することができます。
どれだけ気の遠くなるような大きな数であっても、この 3 つしかありません。
それぞれ

3k
3k + 1
3k + 2

と表すことができます。
さらにこれを平方します。

(3k)^2 = 3 * 3n^2
(3k + 1)^2 = 3 * (3n^2 + 2n) + 1
(3k + 2)^2 = 3 * (3n^2 + 4n + 1) + 1

となります。
このことから、3 の倍数でない数を平方して、3 で割ると必ず余り 1 となる事がわかります。
余り 2 になることは絶対にありません。

数論を学習するにおいて、とても重要な事を書きます。

すべての平方数を 3 で割ると余りは 0 か 1 になります。
余りが 2 になることはありません。

なので、a と b を 3 の倍数でないとしたので、

a^2 = 3m + 1
b^2 = 3n + 1

と表せるわけです。

では次に進みます。
a^2 + b^2 = c^2 の左辺を計算します。

a^2 + b^2 = (3m + 1) + (3n + 1) = 3 * (m + n) + 2

計算の結果から a^2 + b^2 を 3 で割ると余りが 2 になる事がわかります。

しかし、a^2 + b^2 = c^2 の右辺 c^2 は平方数なので、3 で割ると余りは 0 か 1 になります。
2 になる事は絶対にありません。

ここで、左辺は 3 で割ったとき余りが 2、右辺は 3 で割ったときに余りが 0 か 1 ですから、

a^2 + b^2 = c^2

は矛盾してしまいます。
つまり初めに仮定した「a と b を共に 3 の倍数でない」は間違いだとわかります。
また、既約ピタゴラス数は a, b, c が互いに素なので、a と b の両方が 3 の倍数にはなれません。
よって、

a と b はいずれか一方が 3 の倍数です。



(b)既約ピタゴラス数(a, b, c は互いに素である)の a, b, c のいずれかが 5 の倍数であることを示せ。

これも似たような感じでできます。

a, b, c 共に 5 の倍数でないと仮定します。

すべての整数を 5 で割ると、

余りが 0 になる
余りが 1 になる
余りが 2 になる
余りが 3 になる
余りが 4 になる

の 5 通りに分類されます。それぞれ

5k
5k + 1
5k + 2
5k + 3
5k + 4

と表すことができます。それぞれを平方してみます。

(5k)^2 = 5 * 5k^2
(5k + 1)^2 = 5 * (5k^2 + 2k) + 1
(5k + 2)^2 = 5 * (5k^2 + 4k) + 4
(5k + 3)^2 = 5 * (5k^2 + 6k) + 4
(5k + 4)^2 = 5 * (5k^2 + 8k) + 1

以上から、5 で割り切れない平方数を 5 で割ったときの余りは 1 か 4 になります。

右辺の c^2 は 5 の倍数ではないと仮定したので、5 で割ったときの余りは 1 か 4 です。
今回は余りのパターンが 1 と 4 があるので、左辺はすべての組み合わせを考えます。

a^2 = 5m + 1
b^2 = 5n + 1

のとき、

a^2 + b^2 = (5m + 1) + (5n + 1) = 5 * (m + n) + 2

左辺の余りは 2 になるので矛盾します。

a^2 = 5m + 1
b^2 = 5n + 4

のとき、

a^2 + b^2 = (5m + 1) + (5n + 4) = 5 * (m + n + 1)

左辺の余りは 0 になるので矛盾します。

a^2 = 5m + 4
b^2 = 5n + 1

のとき、

a^2 + b^2 = (5m + 4) + (5n + 1) = 5 * (m + n + 1)

これも左辺の余りは 0 になるので矛盾します。

a^2 = 5m + 4
b^2 = 5n + 4

のとき、

a^2 + b^2 = (5m + 4) + (5n + 4) = 5 * (m + n + 1) + 3

左辺の余りは 3 になるので矛盾します。

すべてのパターンで

a^2 + b^2 = c^2

が矛盾することがわかりました。
つまり、初めに仮定した「a, b, c 共に 5 の倍数でない」は間違いです。
また、既約ピタゴラス数は a, b, c が互いに素なので、a, b, c の組み合わせで 5 の倍数が 2 つ以上あってはいけません。
よって、

a, b, c のいずれか 1 つが 5 の倍数です。